『ドブ川』 作家 入間しゅか
2020年11月8日(白帯)
「ドブ川」
作家 入間しゅか
川面に顔をだして
大量の鯉が大口を開け
ぼくがエサを投げ込むのを待っている
ぼくは何も持っていない
ドブ川をながめてる
水はいつでも黒く濁り
濁った水と同じ色した鯉と
ヘドロを背負った亀がいる
外来種しかいない臭い川
食パンを持った老人が
一掴み
パンをちぎって投げ入れた
鯉たちはバシャバシャと跳ね回り
水飛沫をあげながらパンを奪い合う
老人がまたパンを
一掴み
投げ入れる
ドブ川とはどんな景色だろう
きたねー川でおよいでんしゃねぇよ
なんて言ったら
きたねー空気すってんな
なんて言われそうだ
ぼくらには隔たりがある
生活という隔たりがある
時間という隔たりがある
共有できないもので築かれた
大きな隔たりに一本の橋を掛ける
パンを投げ入れる時
落ちてくるパン待つ時
ちぎったパンが落ちるまでの時間
瞬間にかけろ
一掴みのパン
一方通行の挨拶
老人はパンを全て投げて去っていった
ぼくもなんだか寒くなって家に帰った
残された鯉だけが一方通行のパンクズを求めて大口を開けてる
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